Z世代、クレカは不安 前払いカードで韓国旅行
近場の韓国は人気の海外旅行先の一つ。新型コロナウイルス禍からの経済再開と新たなキャッシュレスサービスで、玄関口である仁川空港ではこれまでとは違う風景が広がる。
至るところに、プリペイドカード「WOWPASS(ワウパス)」を発行する機械がある。必要な証明書はパスポートだけでクレジットカードのような与信審査はない。日 本円など外国の通貨を入金するとウォンに換算され、店舗の端末にかざせば決済できる。
サービス開始から1年で30万枚が発行された。そのうち半分以上は直近の3カ月で発行された。日本国内で発行されたクレジットカードは2022年3月末時点で3億100万枚と利用規模は全く違うが、伸び率は前年比で1.9%にとどまる。
運営会社のオレンジスクエアによると、ワウパス利用者の40%が日本人観光客だ。李長白最高経営責任者(CEO)は「旅行前にSNSやブログで(決済手段などの)情報を集め、気に入ったら発信する特徴がある」と指摘する。クレジットカードが使えるのに、SNSでサービスを知った20〜30代の日本人女性の利用が多いという。
都内に住む長尾朋花さん(22)もその一人。「簡単にスマートフォンで残高を確認でき、入れた分だけしかお金を使えないので、クレジットカードを利用するより安心 感があった」と振り返る。
海外で普段利用しているクレジットカードを使うとカード情報を盗むスキミングや紛失のリスクがある。ワウパスは紛失時の利用停止がアプリで簡単にでき、残高を引き継ぐことができる点も評価されている。
タイやシンガポールでもプリペイドカードが観光客に利用される。日本のSuica(スイカ)やPASMO(パスモ)と同じように交通でもコンビニでも利用できる。
安心感や使いすぎ防止を重視するZ世代は、金銭の貸し借りが発生することに抵抗感を持ちやすい。SMBCコンシューマーファイナンスの調査では、人におごりたくないと考える割合が37.2%、人におごられたくないと考える割合が25.5%だった。
立て替えた支払いの割り勘の計算を簡単に行えるWalica(ワリカ)というサイトの利用者が増加している。運営会社によると、複数人での旅行や飲み会などのシーンで多く利用されているという。海外旅行で利用される機会も多く、現在60種類以上の外貨に対応する。
都内で働く篠原真歩さん(23)はワリカを日常使いする。複数人でスーパーやコンビニに買い出しに行く時に使う。「お金を対等に払うことで、相手との長い関係を望んでいる」とZ世代を自己分析する。
ワリカを利用すると、3人以上のグループで発生した複数の立て替え支払いの計算が簡単になる。立て替えた支払いの一つ一つで精算の対象者を指定でき、最終的に誰にいくら支払うかを表示する。
Z世代は他の世代以上に貸し借りを嫌がる傾向がある。金融機関ビジネスの根幹は貸し出しだ。これまでの延長ではZ世代を取り込めず、顧客層が高齢化する銀行や証券会社は危機感を強めている。
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